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イルたち4人はリニツィオルーチェ王国の門の前に来た。門番は言う。
門番ー「ああ、昨日のあんちゃんたち。通行証は手に入ったかい?」
門番の問いかけにビルが口を開く。
ビルー「通行証は手に入らなかったけど、通行許可をくれる人は見つけられたぜ!」
ビルがそう言うとクラムを門番の前に誘導する。クラムをみた門番は驚いた顔で言う。
門番ー「クラム様…!?あんちゃんたち、クラム様にへんなことしてねーだろうな?」
門番の問いかけに、かぶせるようにクラムが必死で答える。
クラムー「おじさま、私は何もされていませんわ!この方達は昨晩私が盗賊たちに襲われているところを助けてくださった命の恩人ですの…!」
クラムの説得力のある言葉に門番も納得したような様子で言う。
門番ー「クラム様が言うのなら…。」
門番が納得したところでイルが話を戻すように言う。
イルー「クラムが通行許可を出してくれるみたいなんだけど、ここを通してもらえるかな?」
イルの言葉に門番は全員の顔をみてから言う。
門番ー「もちろんだとも!クラム様を助けてくださった御一行様だ!どうぞ、中へ。」
門番が道を開け、とうとうリニツィオルーチェ王国へと4人は入っていく。
<リニツィオルーチェ王国の中>
イルたち4人はリニツィオルーチェ王国へと入っていった。そこには整備された美しい街並みと元気に遊ぶ子供達の笑い声、毎日を楽しそうに過ごす住民たちの姿があった。
その様子をみてビルが言う。
ビルー「うっわ〜!これがリニツィオルーチェ王国かー!綺麗だしおっきいなぁ〜!」
ビルと同様にイルも興奮していた。クラムが言う。
クラムー「みなさま方、この度は本当にありがとうございました!なんとお礼をもうしていいのやら…。」
といった後にクラムが続ける。
クラムー「みなさまは私の命の恩人でございます。このことは私の父である国王にもお伝えしなくてはなりません!ですので、街を見て回る前にどうか私と王宮へとご一緒して下さいませんか?」
クラムの言葉にイルたちは頷く。
王宮までの道のりでは、会う人会う人がクラムに挨拶をする。そしてクラムは王女と呼ぶにふさわしい笑顔で一人一人丁寧に受け答えをする。
そんな中、イルとユウは街の異変に少しずつ気づき始める。ユウが言う。
ユウー「イル…。」
ユウの呼びかけに何を言いたげなのかを悟ったようにイルが言う。
イルー「あぁ…。」
そしてイルがクラムに問いかける。
イルー「クラム、一つ聞いてもいいか?」
クラムが言う。
クラムー「はい、なんでもお答えいたします!」
クラムの許可を得たところで、イルが続ける。
イルー「答えにくかったらいいんだけど、この街ではなにか大きな問題を抱えているんじゃないか?」
イルが少し濁したように問いただす。イルの言葉に、顔をうつむけクラムがゆっくりと答える。
クラムー「…はい。イル様も薄々お気づきかと思いますが、この王国では今まさに貧困格差が進んでおります。貧しい住民たちは明日生きるお金を稼いでいくのもやっと…。盗みを働き、生活を繋いでいる人も大勢いるのが現状です。」
さらにクラムが続ける。
クラムー「また、この国で生活が困難だと判断された人々は王国軍によって国から追放されてしまいます。王国軍は常に街を徘徊しており、そういった人々を探し出しては国の外へ連行するといったことを日常的に行なっています。なので、住民のみなさんはそんな状況でもこの国で必死に生きようとしているんです…。」
クラムの言葉はイルやユウが想像していたよりもずっと重いものだった。驚きを隠せない二人を前にビルが言う。
ビルー「…そんなことをよそ者の俺たちに話しても大丈夫なのか?」
ビルの問いかけにクラムが言う。
クラムー「はい。みなさまは私の命の恩人。何をしてもお返ししきれないことをしていただきましたので私のできることであればなんでもお応えいたします。」
クラムがそう言うと、ユウは意地悪な質問をする。
ユウー「そういった現状をクラムが知ってると言うことは、王宮の人間は当然知っているわけだろ?国民を守るべき存在が国民を見捨てるようなことをしていていいのか?」
ユウの言葉にクラムが自分の弱さを噛み締めながら言う。
クラムー「ユウ様の言う通りでございます。しかし、つい100年ほど前まではこの王国も国民全員が笑って暮らせるような貧困格差のない国でした。当時国王だった私の祖父は国民を一番に想う良い国王だったと聞きます。」
そういった後、少し悲しそうにクラムが続ける。
クラムー「そんな中、国王がいつの日からか突然豹変したんです。それはもう以前の国王とは思えないほどの豹変ぶりで、次々に国民の負担となるような改革を行ったそうです。その影響は今現在でも続き、より深刻になっています。現国王の私の父も祖父が他界してから同じように豹変しました。」
クラムがさらに言う。
クラムー「私はこの国が好きです。いつの日か国民全員が笑えるような国にしたいと強く願っています。そのために私ができることはこの国の国民を私ができる範囲で守ること。そのために、微力ですが追放された国民たちをこっそりと国へ入国させ、色々な仕事先で雇ってもらえるようにお願いをしにいっています。たくさんの人にご迷惑をおかけしていますが、もう少しの辛抱だと心を鬼にし自分がやれるべきことをー。」
クラムは涙ぐみながら言いました。クラムの言葉にユウが言う。
ユウー「だから王女なのに国の外に居たのか…。」
少々の沈黙後にビルが言う。
ビルー「クラム、お前はつえーよ。だけどもう大丈夫だ!俺たちがこの国をすくってやる!」
ビルの無責任な言葉に呆れながらもイルが言う。
イルー「お前みたいな一個人が解決できるような簡単な問題じゃないんだよ。ただ…。」
そう言うとクラムが話を戻すように言う。
クラムー「暗い話をしてしまい申し訳ございません!そろそろ王宮につきますので、どうか今のお話はお忘れください。」
そう言いながら、クラムを先頭に4人は王宮へと歩いていく。
クラムが話したリニツィオルーチェ王国の闇は、思っている以上に深刻だった。そのことに4人はまだ気づく余地もない。

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