イルのみちびき

イルのみちびき29話〜貧困街に住む希望!ララオプリオのアル〜

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イルのみちびき28話〜ラヴェートとストールスティング〜▽前の話(27話)はこちらから https://matatabilog.jp/il-guidance-27/ 黒装束...

 

祭事メローンが行われるまで残り2日。

この2日の間にイルたちは兵器の密売場所を特定することと2極化の問題を把握し改善していくという目的を達成しなければならない。

そして、イルたちは2手に分かれて行動することになった。

 

<2極化組:ティア・ビル・レーラ>

2極化組のティア・ビル・レーラは、まず貧困の問題を把握するために貧民街へと向かっていた。ビルが言う。

ビルー「貧民街…。門の入り口付近で横たわっている人たちのことを考えると相当酷そうな場所だな。」

ビルの言葉を聞いてティアが頷き回答する。

ティアー「えぇ、私も初めてここへ行った時は言葉を失ったわ。だけど、この国の現状を確認する上ではとても大切な場所なの。そう、必ず見ておかなければならない場所。」

ティアの真剣な言葉に緊張感が走る。思わずビルとレーラも真剣な顔になる。

<デフェロン王国の貧民街>

超先進国家のデフェロン王国では、激しい貧困格差によりデフェロン王国の中に大きな貧民街が生まれていた。まるで時代を巻き戻したかのように簡易的に作られた家が多く立ち並び、国民たちのほとんどが栄養失調のように細々とした体付きをしている。また、いくつかお店はあるようだが販売されている商品は少なく、商品も街で売られているものよりも高い。

そうこうしているうちにティア・ビル・レーラの3人は貧困街へ到着した。

貧民街の光景を見てビルとレーラは絶句する。先ほどまでいた街からは考えられないくらいに違いすぎる生活格差だった。

ビルが言う。

ビルー「…なんだよ、これ…。」

貧民街を見渡す限り、国民に笑顔と活気はなかった。それほどまでに皆が疲弊しきっているのだ。

まじまじと貧民街を見ていると、国民の1人がティアたちが訪れたことに気づいて近づいてきた。

国民1ー「…食べ物を分けてくれ。」

とても弱々しい声だった。その言葉を聞いて思わずビルは食料を与えた。食料を分けてもらえると知った他の国民たちも次々に近づいてきて言う。

国民ー「私にも食料を分けてください。」「俺にも」「食料をくれ。」

たちまちティアたちは国民たちに囲まれた。身動きも取れないくらいにたくさんの人たちがティアたち3人を囲い出した。

国民たちの勢いがすごく、押された衝撃でビルが少しよろけた。

ビルー「あぶなっ…!」

よろけた時に少しだけ周りの国民を押してしまった。普通なら耐えられるほどの強さだったが、国民たちに踏ん張る力もなくドミノだおしのように倒れてしまった。

そして、一番後ろで下敷きになった人が大きな声で言う。

国民2ー「イテェェェェ!!!」

このとき、この国民は倒された衝撃で骨折してしまったのだ。

その様子を見たビルは駆け寄り、声をかける。

ビルー「す、すみません!大丈夫ですか!?」

しかし、周りの人たちはそんなことに構いもせずビルたちに対する物乞いをやめない。目の前に怪我をしている人間に見向きもしないのだ。その姿にビルはどうしたらいいかパニックになってしまった。

その時、奥の方から誰かがやってきて貧民街の国民たちに言う。

「みなさん、お客人から離れてください。」

その声に反応し人々は物乞いをやめ、ビルたちから離れていく。声の主が続ける。

「みなさん、せっかくお越しいただいたのにとんだご無礼を。私から謝罪させていただきます。申し訳ございません。」

声の主は30代くらいの男性で周りの人たちよりもまともに喋れるようだが、それでも体は細く、よく見ると栄養失調のせいか足が震えていた。

そんな男性の傍らには8歳ほどの男の子が付いていた。その男性を支えているようだった。

30代くらいの男性が続ける。

30代くらいの男性ー「私の名前は”エレン”。そして、この子は”アル”と言います。」

すかさずティアたちが挨拶をする。

ティアー「私はティアです。」

レーラー「レーラよ。」

しかし、ビルはまだパニック状態だった。エレンの挨拶に気づいていない。その様子を見てレーラが呼びかける。

レーラー「ビル?…ビル!」

レーラの言葉でビルがやっと正気を取り戻した。

ビルー「…はっ!すまねぇ、俺はビルだよろしく。」

全員が挨拶を行なった。ビルの様子を見てエレンは何かを悟ったように微笑みかける。エレンが続ける。

エレンー「色々と聞きたいこともあるかと思いますが、立ち話もなんです、私の家にお越しください。」

その後、エレンは周りの人たちに言う。

エレンー「骨折した彼は、みなさんにお願いしてもよろしいですか?」

エレンの呼びかけに人々は頷く。

その様子を見てビルも動こうとするがエレンが言う。

エレンー「ビルさん、今は彼らに任せて大丈夫です。ここでは怪我や骨折は日常茶飯事。対応は彼らの方が慣れていますよ。もし、負い目を感じているのなら、あとで落ち着いた時にでも謝りに行ってあげてください。」

ビルはエレンの言葉を聞き、後で謝りに行くことに決め、エレンの後をついていくことにした。

エレンを先頭に貧民街を歩いている。ティアたち3人は貧民街の様子と見ながら歩いていた。そんなティアたちを見てエレンは言う。

エレンー「先程までの街とは全く違いますよね。まるで数世紀巻き戻したかのような街…と言う感じでしょうか。資源が圧倒的に不足しているので、その頃よりきつい生活をしているのですがね…。」

エレンは続ける。

エレンー「しかし、それでもみなさんは1日1日を一生懸命生きています。明日死ぬかもしれないこの状況でも、一生懸命生きているんです。」

エレンの言葉には重みがあった。それだけこの状況がギリギリなことがわかった。

そんな話を聞きながら、ティアたちはエレンの家に到着する。

エレンの家は貧民街の中では少し裕福に見えるが、やはりボロ屋であった。エレンが言う。

エレンー「綺麗ではありませんが、どうぞ中へ。」

エレンが家の中へと誘導する。ティアたちはエレンについていった。

エレンの家は外見ほど汚くなく、綺麗に整えられていた。ティアたちはエレンにリビングと思われるところに誘導された。リビングにきたところでエレンが言う。

エレンー「みなさん、どうぞお座り下さい。…アル、皆さんにお茶を出してあげてください、できますね?」

エレンの言葉にアルはゆっくりと頷き、キッチンの方へと歩いていく。

その様子を見てティアが言う。

ティアー「しっかりしたお子さんですね。」

ティアの言葉にエレンが嬉しそうに答える。

エレンー「私自慢の子なんです。」

エレンは嬉しそうだった。少し間が空いたところで、エレンは再びティアたちの方を見て続ける。

エレンー「…改めて、先ほどは街の人間が皆様に失礼なことを。すみませんでした。」

エレンが頭を下げる。その様子にティアが答える。

ティアー「いいえ、私たちに危害は加わっていませんので大丈夫ですよ。」

ビルもすかさず答える。

ビルー「お、おうよ!俺たちは全然大丈夫だ!…。」

ティアの言葉にエレンは頭を上げ、続ける。

エレンー「お優しいお言葉痛み入ります。皆様が体験した通り、この貧困街は一刻を争うほどに深刻です。日々人々が餓死し、埋葬する日々…。」

エレンー「それだけでははなく貧困層の割合は増え続け、今もなおこの貧困街に流れてくる国民が後を絶たちません。」

その後、エレンはうつむきながら続ける。

エレンー「…しかし、そんな極限の状態でも私たちには現状を打破できるような力はありません。毎日、人々が死んでいく姿を何もできずに見ていることしかできない…。何が街長だと言う感じですよね。」

エレンの話を聞いて、ビルが質問する。

ビルー「…こんなにも辛い生活をしているならこの国を出れば良いんじゃないか?危険は多いけど、資源は多いし今の生活よりはマシになるんじゃないかと思うんだけど。」

ビルの質問にエレンが答える。

エレンー「ビルくんの言う通りです。しかし、生まれも育ちもデフェロン王国の私たちは出国をする際に多額の出国金を支払わなければならないんです。それはかなり高額に設定されており、払える人間は一部商人を除き、中心部にもほとんどいないと言うのが現状です。」

ビルがさらに質問をする。

ビルー「じゃ、じゃあ、時間を見計らってこっそり国を出るってことはできないのか?」

ビルの質問にエレンが答える。

エレンー「できないわけではありませんがかなり困難です。この国の出入り口は基本的にビルさんたちがくぐってきた門のみ。警備は厳重で24時間警備員が配置されています。もしも、警備員を退けられたとしても、門にはセンサーがついていて、不法に出入国した者がいるとそのセンサーが作動し、見つかってしまいます。…もう1箇所、国外へと通じる道がありますが、そちらはビルさんたちがくぐってきた門よりも警備が厳重で私たちの力ではたどり着くのは不可能です。」

エレンの話を聞いて、一同は納得した。その後、少々の沈黙があり、再びエレンが話す。

エレンー「しかし、私たちにも希望がないわけではありません。現状を打破できるほどではありませんが、この子が私たち国民の唯一の希望なのです。」

エレンがお茶を運んできたアルの頭を撫でながら言った。

エレンの言葉を聞いてレーラが言う。

レーラー「アルくんがみんなの希望…?それってどう言うことなの?」

レーラの質問にエレンが真剣な顔で答える。

エレンー「…アルは完成された”ララオプリオ”なんです。」

エレンの言葉に一同は理解できない。ビルがエレンに聞く。

ビルー「…”ララオプリオ”って?」

ビルの質問にエレンが答える。

エレンー「…みなさんはこの国で作られるララシーウォスを見たことがありますか?」

エレンの問いにビルが答える。

ビルー「あぁ、特殊な力を持った武器のことだろ?」

ビルの言葉を聞いてエレンが答える。

エレンー「えぇ、そうです。ララシーウォスの媒体が武器なのに対し、ララオプリオの媒体は人間。つまり、ララオプリオとは”特殊な力を持つ人間のこと”を指します。」

エレンの言葉に一同に衝撃が走った。ビルはアルを見ながら言う。

ビルー「アルがララオプリオ…。こんなに小さな子が…。アルは…エレンの子なんだよな…?なんでそんなことに…?」

ビルの言葉にエレンは深刻な顔をして答える。

エレンー「はい、アルは私の実の子です。そして…アルをララオプリオにしたのは…私です。」

エレンの言葉を聞いてビルはエレンの胸ぐらを掴み、怒り狂ったように言う。

ビルー「なんで…なんで自分の子供を実験に使うようなことを…!!」

ビルは怒っていた。エレンは悲しそうな顔をしているが、反論しようとしない。その様子を見てビルが言う。

ビルー「なんで何も言わないんだよ!なんで、なんでだよ…。」

激情しているビルにティアが声を掛ける。

ティアー「ビル、ひとまず気持ちを抑えてくれるかしら。」

ティアの言葉を聞いてビルはエレンの胸ぐらをはなし、再び椅子に座るのであった。ティアが続ける。

ティアー「エレンさん。アルちゃんがその…ララオプリオになってしまった理由って聞けるかしら?あと、”完成されたララオプリオ”って…?」

ティアの質問にエレンが口を開く。

エレンー「…私は、今でこそ貧困街で街長をしていますが、少し前まではこの国の研究者でした…。」

3年前、エレンは国の研究機関にいた。

エレンの立場は研究局長。研究者の中でも最も偉く強い権利を持っていた。

他にも優秀な研究者は多くいたが、エレンが研究局長になったきっかけは”ララシーウォスの開発”。この開発でエレンは若くして研究局長としての役職につくことができたのだ。

このララシーウォスが賞賛されたのは大きく分けて3つの理由がある。

1つ目は、地球上に存在するあらゆる能力を凝縮させることに成功したということ。もちろん凝縮させるだけではなく、能力として使えるようにする技術も合わせて開発した。

2つ目は凝縮した能力を道具や武器に入れ込むことができたということ。魔剣のように能力を持たせた状態で作られた武器は存在したが、能力を持たない武器に能力を入れ込むというのは世界初の技術でした。道具も然り。

そして、3つ目。それは、このララシーウォスが軍事利用できるということ。戦争の耐えないこの世界では武器売買で大きな資産を築くことができる。そしてなにより、自国の武力強化も行える。

しかし、もともとこのララシーウォスという技術は軍事目的ではなく、国民の生活を楽にするため、人間の足りない力を補うための技術になるようにとエレンが開発したものだった。

自然の力を道具に取り入れ、その能力を使って農業を楽にしたり、力のない老子でも重い荷物を持ったり、と。

その技術を軍事利用すると国に言われた時、当然ながらエレンは真っ先に反対した。

エレンー「このララシーウォスはデフェロン王国の国民の生活が少しでも豊かになるようにと開発した技術です。軍事利用なんてとんでもない!私は反対です!」

エレンの必死の説得により、その時はひとまずエレンの考えた用途でララシーウォスの製造を行うことが決定した。

その後も、エレンはこのララシーウォスの研究を行い、様々なものに様々な能力を入れ込むことに成功する。

しかし、ララシーウォスの技術がどんどん進化していくと同時にエレンは、この技術が軍事利用に適していること感じていく。

そして、この技術が外部で再現できないよう、重要な箇所だけは研究員に任せず、自分で行うことを徹底した。そんな徹底した対応のおかげで軍事利用されることなく月日が流れていった。

その間にエレンは妻ミールと結婚し、子供を授かる。名前はアルとし、大切に育てていく。

しかし、アルが5歳になる前のこと、突然アルは難病に犯される。その病気はデフェロン王国の技術を持ってしても治せない難病だった。

余命6ヶ月。そう宣告され、エレンは絶望の淵に立たされた。

エレンー「どうすれば…どうすればいいんだ!!」

その時、ミールがエレンに言う。

ミールー「エレン、アルを助けられるのはあなたしかいないわ。あなたがなんとかするの。お願い。」

ミールの言葉を聞き、エレンはそこから難病を治す方法を探った。しかし、治す方法は見つからなかった。

行き詰まりを見せた時、ふとエレンの頭に一つの案が浮かぶ。それが、”アルをララオプリオにすること”だった。

しかし、エレンの中で葛藤があった。人体実験を行わなければならないだけでなく、その人体実験を行う必要があるのが自分の実の子だったからだ。決して侵してはいけない禁忌を犯そうとしている。エレンは本当にアルをララオプリオにしても良いものなのかを考えた。

ただ、それでもアルが助かる道はそれしかなく、エレンは覚悟を決め、止むを得ずララオプリオ開発に向けて動いていくことにした。

早速、エレンは研究室にこもり多くのマウスを使用し、生物に能力を入れ込む研究をはじめた。しかし、道具と生物とでは全くの別物。能力に耐えきれず死んでしまうものもいれば、生きていても能力が発現することはなかった。

何十回と研究を行ってもただの1匹も能力が発現することはなく、また結果の違うマウスが生まれることについてもその法則すらわからなかった。

エレンー「…なんでうまくいかないんだ…!」

滞りを見せ始めた研究。そのことを妻ミールに伝えた。

エレンー「私は今、生物に能力を入れ込むララオプリオの実験をしているだ。しかし、全くうまくいかない。どうすればいいのやら…。」

エレンの言葉にミールが答える。

ミールー「生物と道具は違うわ。武器に合わせて作っていたものを生物に合わせて作ってみればいいんじゃない?」

ミールの言葉を聞き、少し考え込み、何かを閃いたように言う。

エレンー「…!わかったぞ!ミール、本当にありがとう!!」

そう言ってエレンは再び研究室に向かった。

エレンは、研究室に着くなりすぐさま研究を再開した。休憩を挟む間も無く研究に没頭する。

研究を再開して2日。ついにマウスでのララオプリオの実験に成功した。エレンが言う。

エレンー「今、大きな一歩を踏み出した…!あと少し…。…アル、もう少しの辛抱だ、待っていてくれ!」

しかしその頃、アルは深刻な状態だった。宣告を受け3ヶ月。医師が想像していた以上に早く病気は悪化していっていたのだ。

アルー「…!…うぅ…。……。」

アルはかなり辛そうだった。そばにいるミールが言う。

ミールー「アル、頑張って…!(…エレン、早く…!!)」

 

マウスでの実験を成功させ、エレンは研究の最終段階へと進んでいた。

エレンー「この実験が成功すればとうとうアルに…。」

そして、とうとうエレンは確実に生物に能力を入れ込む実験に成功したのであった。

エレンは急いでアルの元へと向かった。しかし、病気の侵攻は早くエレンが到着する少し前からアルの呼吸が止まっていた。

ミールがエレンをみて泣きながら言う。

ミールー「…エレン…。アルが…。」

ミールに抱きかかえられていたアルをみてエレンは一瞬悲しそうな顔をして、涙ぐむ。しかし、真剣な顔をしてエレンが言う。

エレンー「まだだ…!!」

そう言うとエレンはアルを抱きかかえ、研究室へと走って行った。

エレンー「(アル…。)」

エレンが研究室に着く。急いでアルを研究台に乗せ、実験通りの手順で進めていく。

その間もアルに意識が戻ることはなかった。

実験は順調に進み、とうとうエレンはアルに能力を当て込むことに成功した。エレンが思いの丈を心の中で叫ぶ。

エレンー「(…頼む…。生き返ってくれっ!!)」

実験が成功してから数分後、止まっていたアルの呼吸が戻った。

エレンは泣きながら言う。

エレンー「よかった…。よかった…。」

 

実験が終わり、アルがララオプリオになってからちょうど1ヶ月。ついにアルは目を覚ました。

エレンとミールは泣きながらアルを抱きかかえ言う。

エレン・ミールー「アル!!」

アルにララオプリオになった時の後遺症はなかった。そして、アルは初めて生まれたララオプリオとなった。

 

アルが意識を取り戻してからエレンはなるべく家族との時間を大切に過ごすようにしていた。しかし、その幸せも長くは続かなかった。

ララオプリオの誕生により、国が再びララシーウォスやララオプリオを軍事利用しようとしはじめたのだ。

今度は、ミールとアルを人質に取り、エレンにララシーウォスの製造方法を教えることとララオプリオ生誕の実験を行うようにと強要した。

国王ー「軍事利用できるララオプリオを誕生させるのだ。もし、誕生させることができなければ妻子の命はない。」

必死で掴んだ3人の幸せを一瞬で奪い去っていく国。

それだけでなく、アルを生かすためだけに生まれたララオプリオの技術を軍事利用のために使おうとしている。

強引すぎる国の対応にエレンは怒り狂っていた。

しかし、その怒りをどこにぶつけることもできず、国王の条件をのむ他ミールとアルを助ける手段はなかった。

エレンは、ララシーウォスの研究資料を共有し、その手順で実際にララシーウォスを作れるのか目の前でやって見せた。その後、ミールとアルのために必死でララオプリオの研究を行った。

一度完成させているララオプリオを誕生させるのはそう難しいことではなかった。まずは、水の能力を持った1人目のララオプリオを誕生させる。

エレンが国王に報告する。

エレンー「国王様、ララシーウォスの資料を共有し、ララオプリオを1名誕生させることに成功しました!…私めに妻と子をお返しくださいませ。」

エレンの言葉に国王が言う。

国王ー「よくやった。…引き続き2人目のララオプリオ誕生に向け尽力せよ。」

国王の条件を呑み、条件を達成させたにも関わらず、妻ミールと子アルはエレンの元には帰ってこなかった。

その日からエレンは、警備の目を盗み、ララオプリオの研究と並行してミールやアルの居場所を探るようになった。

ミールとアルを探し始めて1ヶ月。とうとう2人の居場所がわかった。エレンは、早速深夜に、人目をかわしながら二人の元へと向かった。

ミールとアルの部屋は別々でお互いの声が届かないようになっていた。それどころか目に布が巻かれており、何も見えないようにされていた。

エレンは、まずアルの部屋へいき、アルに話しかけた。

エレンー「アル…!お父さんだ、わかるか?」

布を巻かれていたアルだったが、エレンの言葉に反応し、涙を流しながらエレンに近づく。そして近づいた後に頷いた。

エレンはアルの目にかかった布を取り、話を続ける。

エレンー「アル、お前はな、実はすごく強いんだ。手が繋がれている鎖やお父さんとアルの間にあるこの檻を壊すことができるんだぞ!」

エレンは、アルのララオプリオとしての力を使ってここを脱出しようと考えていたのだった。そんなエレンの言葉にアルが言う。

アルー「こんなに硬いもの、僕じゃ壊せないよ。」

アルの言葉にエレンが優しく言う。

エレンー「アル、目の前にある檻を両手でしっかり握ってごらん。」

エレンの言う通り不思議に思いながらもアルは両手檻を握った。エレンが続ける。

エレンー「そしたらね、目を閉じて体に流れる”血”を想像するんだ。」

エレンが言った通りにアルはやってみる。

エレンー「想像したら、さらにその”血”を檻を握っているこの手に平に集中させせるように頭の中で想像してごらん。」

エレンに言う通りにするが何もおこならない。アルが言う。

アルー「お父さんの言う通りにやったけどなにも起こらないよ。」

能力を使うことなど一朝一夕でできるようなものではなかった。それはエレンももちろん理解していた。

しかし、アルに能力を使ってもらう他、ミールとアルを助け、ここから脱出する術はなかった。

 

その時、エレンの後ろから声が聞こえた。

「誰かいるのか?」

警備員の声だ。足音が近づいてくる。アルの幽閉されている部屋の出口は1つしかなく、隠れる場所もない。ここでエレンが捕まってしまえば、二度とアルやミールの元へ帰っては来れないだろう。

それでも、アルに能力を使ってもらわなければ出ることはできない。エレンにアルに言う。

エレンー「大丈夫。アルだったらできるよ。だって、俺の子なんだから。…ほら、もう一度やってみて。」

エレンの目は真剣でまっすぐだった。その目を見たアルは何かを感じ取ったように目を閉じ、手の平に意識を集中し始めた。

すると、少しずつ檻が熱くなり始めた。

その様子を見たエレンは嬉しくなり、声が出そうになるがその気持ちをグッとこらえ、静かに見守った。

檻はどんどん熱くなっていく。そして次の瞬間、アルが握っていた檻の鉄がとけ始めた。

アルは目を開く。そして、自分の手のひらで溶けている檻を見て驚き、言う。

アルー「檻が溶けてる。なんで??」

アルの言葉にエレンが言う。

エレンー「アルがやったんだよ。アルはやっぱり天才だ。今の感覚を忘れないうちにもう一回やっておこう。」

そう言って、アルが出れるように手の位置を変えさせ同じことをやるように指示した。

そうこうしていると、また後ろから声が聞こえる。

「おい、そこにいるのは誰だ!」

どんどん近づいてくる。時間がない。

 

アルは先ほどの感覚を呼び起こすように檻を溶かした。アルにエレンは言う。

エレンー「アル、すごいぞ!よし、こっちにおいで。」

エレンは空いた檻からアルを引っ張り出し、アルを檻の中から救出した。エレンは言う。

エレンー「アル、よくやったぞ!この後はお母さんを助けにいく、アル、もう一回力を貸しれくれるか?」

エレンの言葉にアルは返事をする。

アルー「…うん。わかった。」

エレンはアルを連れてミールの元へ向かった。警備にバレず、間一髪でアルのいた部屋から出ることができた。

アルが檻を出て少しした頃、近くまできていた警備員が檻の前まで来て言う。

「…子供が檻を破って脱走したぞー!」

同時に警備員は警報を鳴らした。王宮内に警報音が響き渡る。

警報音がなった頃、エレンたちはミールの元へたどり着いていた。エレンがミールに声をかける。

エレンー「ミール、遅くなってすまない。迎えに来たぞ。」

エレンの声にミールが反応する。

ミールー「エレン…なの?どうしてここへ?」

エレンー「今は答えている時間はないんだ…。アル、さっきみたいにこの檻を溶かすことはできるね?」

エレンの言葉を聞いてアルはさっきと同じように檻を溶かした。

ミールがエレンの方へ近づいていき、目にかかっている布を外してもらう。そして、溶けている檻を見てミールは驚く。

ミールー「アル、あなた…。」

警報がなる。警備員も近くにいるようだった。エレンは言う。

エレンー「ミール、早くこっちへ!」

壊れた檻からミールが出てくる。間髪入れずにエレンたちは王宮の出口へと向かった。

警報がなってからそこまで時間が経っていなかったこともあり、まだ警備員はそこまで多くなかった。

エレンが言う。

エレンー「もうすぐ出口だ!ミール、もう少し頑張れ!」

もう少しで王宮の出口にたどり着くと言うところで、エレンたちの前に警備員が数名立ちはだかった。

「待て!」

エレンたちは警備員を前に立ち止まる。エレンは考えた。

エレンー「(何か策はないか…。目の前の警備員たちを退ける方法は…。)」

そうこうしている間に警備員の一人はエレンたちを捉えるために近づいてきた。

エレンー「(ま、まずい…。)」

その時、アルが叫ぶ。

アルー「あああぁぁぁ!!!」

同時に体全体が光だし、体の周りを稲妻が走る。アルの能力は”電気”だったのだ。

そして、向かってきた警備員をアルの強力な電気が襲う。

「あぁあぁああああ!!」

警備員は倒れた。

エレンとミールはもちろん、他の警備員は驚き、警備員たちは怯んだ。

その隙を見て二人は走り出す。エレンが去り際に言う。

エレンー「その方と同じようになりたくなければ、これ以上は追わないことですね。」

そう言ってエレンとミールは王宮を出て行った…。

エレンー「その後はこの貧困層に身を隠し、姿を変え生活をしていると言うわけです。まぁ、姿を変えなとも、飢えにより誰かわからないくらいにまで変わってしまっているんですがね。」

エレンの身に行ったことやアルがララオプリオとなった理由について話した。

その内容を聞き、ビルは真剣な顔でエレンに言う。

ビル「…。エレンさん、さっきはごめん。そんな事情があったとは知らなくて…。」

ビルに対してエレンが戸惑ったように返す。

エレンー「いえいえ、命を救うためとはいえ、自分の息子を実験材料に使ってしまったのは事実ですから。許されることではありません。」

また、そんなエレンの話を聞いて、レーラが気になったことを尋ねる。

レーラー「今の話を聞いて、その…ミールさん?は今どこにいるの?」

レーラの質問に対してエレンはうつむきながら言う。

エレンー「ミールは、1年ほど前に他界しました。この貧困街へ来てから体が弱くなり、風邪をこじらせて…。」

レーラー「…そうだったの。ごめんなさい、思い出させるようなことを聞いてしまって…。」

エレンー「いえ、大丈夫ですよ。」

そして、少々の沈黙が流れる。ティアがエレンに話し出す。

ティアー「…エレンさん、私たちはこの国の貧困事情を把握するためにここへきました。そして、この問題を解決しようとも思っています。そのためには、エレンさんのお力が必要です。お力をお借りできませんか?」

ティアの言葉にエレンは驚いたように言う。

エレンー「それはそれは、私たちにとっては願っても無いことです。もちろん、微力ではございますが、私でよければ喜んでお力添えさせていただきます。本来であれば、国民である私たち自身で解決しなければならない問題なのですが…。」

エレンの言葉にビルが言う。

ビルー「エレンさんが謝ることじゃねーよ!悪いのはこの国なんだから!綺麗さっぱり解決させようぜ!」

ビルの言葉にエレンに笑顔が生まれた。ティアがエレンに言う。

ティアー「エレンさん、早速だけれど聞きたいことがあります。ここまで貧しい国民が多いと言うことは富を牛耳る人物がいるはず。国王の近くで長年働いていたエレンさんであれば、その人物たちをある程度特定できるんじゃないかと思うのだけれど…?」

ティアの質問にエレンは答える。

エレンー「えぇ、わかりますとも。この国の富は3人に集中しています。それが、貿易商の”ガンゲイル”と研究者の”フォルビス”、武器職人の”ファビオ”です。皆さんも薄々気づいているかと思いますが、この国は他国との貿易で経済を成り立たせている類を見ない国。そして、貿易の主流としてはララシーウォスになります。つまり、ララシーウォスに絡みが深ければ深いほど、そこに富が集中していることになります。」

エレンの言葉にビルが反応する。

ビルー「武器職人のファビオ…。」

反応したビルにエレンが尋ねる。

エレンー「ビルさん、ファビオのことをご存知なのですか?」

エレンの質問にビルが答える。

ビルー「いや、さっき武器屋の店主にこの”ストールスティング”って剣をもらってさ、作ったのがファビオって人だったのを思い出しただけだ。ファビオについては全く知らない。」

エレンはビルの持つストールスティングを見て言う。

エレンー「…そうでしたか。ストールスティング…。長年一緒にいますが、聞いたことがありませんね。しかし、ファビオが作った剣ならきっとビルさんのお力になってくれると思います。大切になさって下さい。」

エレンの言動にレーラが質問をする。

レーラー「さっきからファビオって人のことを知ってそうな感じで話してるけど、エレンさんはファビオとどう言う関係なの??」

レーラの質問にエレンが答える。

エレンー「実は彼とは幼馴染でして…。研究者をやめてからは会っていませんが、ララシーウォスを誕生させた時も一緒に実験を行っていたんですよ。」

エレンの言葉を聞いてティアが言う。

ティアー「そうでしたのね。でしたらファビオさんのことはエレンさんにお願いしても良いかしら?」

ティアの言葉にエレンは言う。

エレンー「もちろんですとも!ファビオは私にお任せ下さい。…で私は何をすれば良いのでしょうか?」

エレンの質問にティアが答える。

ティアー「ファビオさんにお願いしたいのは武器の製造をやめてもらうことです。」

ティアの言葉にエレンは一瞬驚き、そして冷静に答える。

エレンー「…わかりました。彼もララシーウォスの軍事利用には反対していた身です。私の説得にも応じてくれるはずです。」

エレンの言葉にティアが頷く。その様子を見ていたビルが言う。

ビルー「じゃあ、俺たちは貿易商の”ガンゲイル”と研究者の”フォルビス”をなんとかするってことだな!なんか探偵みたいで楽しくなってきたなー!!」

ビルの言葉にレーラが反応する。

レーラー「ビル、遊びじゃないんだから真面目にやりなさいよー。」

ビルが答える。

ビルー「はいはい、わーってるよ。それじゃ、いくぜぇー!!」

ビルの掛け声が部屋に響いた。これからエレンとアルを含めた5人はそれぞれ貿易商の”ガンゲイル”と研究者の”フォルビス”、武器職人の”ファビオ”と接触することが決まった。メーロンまで残り2日、ティアたちは順調に進んでいた。

 

<その後>

ビルは骨折させてしまった国民の元へ行った。

ビルー「さっきは骨折させてしまって、本当にごめんなさい。」

ビルの言葉に反応する。

国民2ー「いえいえ、元話といえば私たちが物乞いをするのがいけなかったのです。こちらこそすみませんでした。」

国民の言葉を聞いてビルが続ける。

ビルー「いや、悪いのはこの国だ。俺たちがこの貧しい現状を必ず変えてやるから、もう少し待っていてくれ!」

ビルの言葉に嬉しそうな顔をして涙を流しながら行った。

国民2ー「…ありがとう。」

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