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明らかに戦闘経験が豊富な謎の黒装束の集団に襲われたイルたち。あいにく、ビルとライデンは夕食を狩りに行っていたため、イルとレーラが戦い、難をしのいだ。
去り際に黒装束のボスらしき人物”ハウザー”とロザリオの短い会話からロザリオと面識があることがわかった。
ビルとライデンが帰ってきたところでロザリオにハウザーと黒装束の集団について問いただした。
ロザリオは、気が引けた顔をしたが、真実を話す必要があると感じ、ゆっくりと話し出した。
ロザリオは、テラスティア王国の王子として生まれた。
ロザリオは長男であり、テラスティア王国の時期国王として大切に育てられた。
しかし、ロザリオは王子として自由のない生活に疲れ果て子供ながらに「俺はこの国を出て自由に旅がしたい」と思うようになる。
そんなロザリオは王子として何不自由ない生活を行い、自分の欲しいものはすぐに手に入る。さらには時期国王を約束された存在。
その願いは贅沢なものだった。
そこからしばらく経ち、ロザリオが7歳の頃、弟にあたる”ファシオ”が誕生した。
ファシオは、ロザリオがいるため時期国王というわけにはいかないものの、第二王子としてロザリオと同じように丁重に扱われ、育てられた。
ファシオは、ロザリオと違い、王族として生きていくという覚悟を幼い頃から持ち育っていったため、7歳になる頃には王族としての風格を手に入れていた。
それは、同じように王子として振る舞い、ファシオの憧れであり続けたロザリオがいたからに他ならない。
王族でありながら誰にでも分け隔てなく接したり、どんな相手でも物怖じせず柔軟な対応するロザリオは、自分では気づいていなかったが王としての気質があった。
一方のファシオは、学問も武術も才能はロザリオよりも上であり、責任感が強い。先頭に立ち民を導く姿は王そのものだった。
ロザリオが20歳の頃、ロザリオは唐突にファシオ(13歳)に言う。
ロザリオー「…この国の王はお前がなれ、ファシオ。俺よりもお前の方が王にふさわしい。」
ロザリオの言葉にファシオは驚き、そして言い返す。
ファシオー「何を言っているのです、兄様。兄様こそ王にふさわしいと思っています。どんな身分の国民に対しても分け隔てなく接することができる心やさしき兄様よりも私の方が王にふさわしいわけがないではありませんか!」
ファシオはロザリオに強く言った。ロザリオは優秀なファシオが自分に憧れていたことを初めて知り、驚いた。しかし、ロザリオが続ける。
ロザリオー「…俺には夢があるんだ。しかし、その夢は王になれば叶わない。…叶わないんだ。」
ロザリオが続ける。
ロザリオー「自分が王族に生まれてしまったことを常に嘆いた。”なんで自分の夢に素直になれないんだ”って。そんな時ファシオ、お前が生まれたんだ。その瞬間、”もしかしたら…?”と期待したが、俺が第一王子であることは変わらないと諦めた。」
ロザリオー「…でもな、成長していくファシオは見て、俺よりもはるかに”王としての気質”あると感じていったんだ。それは、俺よりも頭が良かったり、強いからじゃない。国民のことを第一に考え、国民のために自分をも傷つけられる心の優しい人間だと俺は知っているから。」
ロザリオの言葉を聞いたファシオは驚いた顔をした。ファシオが言う。
ファシオー「…そういってくれるのはすごく嬉しいですが、”俺の夢を叶えるために王を変わって欲しい”ってことですよね?」
ファシオの核心をついた解釈にロザリオはどきっとしながら言う。
ロザリオー「…つ、つまりはその通りだ。…ただ、お前に対する俺の評価に嘘偽りはない。お前は俺よりも王にふさわしい、それに嘘はないんだ。」
ロザリオの言葉を聞いた上で、ファシオが質問する。
ファシオー「…なるほど、わかりました。では、兄様が言っている、夢とはなんなんですか?」
ファシオの問いにロザリオが自信満々に答える。
ロザリオー「このどこまでも続く世界を見て回ることさ!」
夢を語るロザリオの顔は今まで一度も見せたことがないほどに輝いていた。
少々の沈黙の後、ファシオが口を開く。
ファシオー「…はぁ、しかたがないです。そんなにキラキラした目で話されては、断りようがないです。兄様の夢のために私が王になりましょう。しかし、私が王になると言ってもそう簡単な話ではないはず。どうするんです?」
ファシオの問いに、何も考えていなかったような顔をしてロザリオが言う。
ロザリオー「…。国に生きているとバレずに身を隠し続けるって言うのはどうだ?しばらく身を隠せば死んだことになる…はず?」
ロザリオの発言にファシオは眉をひそめながら考え耽る。その後、ファシオが言う。
ファシオー「んー…。それしかなさそうですね。そしたら、私がタイミングを見計らって兄様を誰にも見つからずに国の外へ誘導します。兄様はこっそり国を出て身を隠してください。期間は1年。第一王子が失踪したら国は大々的に捜索を行うはずですが、そこまでは頑張って逃げ切ってください。」
ファシオは笑顔でそう言った後、少し黙った。ロザリオが尋ねる。
ロザリオー「…どうした、ファシオ。」
ロザリオとの思い出を頭の中で振り返りファシオが涙ぐみながら答える。
ファシオー「…。ほんっと兄様はいつもいつも自分勝手なんですから。私はこれから憧れであり目標であった兄様を失うんですよ!悲しいわけないじゃないですか…。」
ファシオが心の内を泣きながらロザリオに話した。ファシオが続ける。
ファシオー「…でも、兄様が私のことを信じて託してくれるんです。そんな嬉しいことはありません!兄様に恥じないような立派な王になってみせます。兄様はどうか私のことは考えず、兄様の夢を叶えてくださいね!」
ファシオは笑顔を作りそう言った。それは感情を押し殺して無理矢理に言っているとロザリオはわかった。
ロザリオは真剣な顔で言う。
ロザリオー「ファシオ、お前は本当にできた弟だ。俺は弟に気を遣わせるようなダメな兄だ。本当にごめん。ただ、俺は死ぬわけじゃない!旅を終えたら必ずお前の元に帰り、旅の話を耳を塞ぎたくなるくらいに聞かせてやるから待ってろよ!」
ロザリオはファシオにそう言った。ファシオが言う。
ファシオー「…はい、絶対ですからね!楽しみにしていますよ!」
その会話から数日が経ち、計画通りにファシオの誘導でロザリオは誰にも知られることなくテラスティア王国を出た。
案の定、ファシオの言う通りロザリオの捜索は大々的に行わた。度々見つかりそうになったが、それでもなんとかバレずに1年間身を隠し続けることに成功した。
テラスティア王国を出てから1年後、国からの捜索はなくなり、ロザリオは晴れて自由の身となった。
ロザリオー「これで俺は自由だ!!よし、ここから俺はこの美しい世界をゆっくりと見て回るんだ!」
…が、そこから2年経ったある日、今度は今までに捜索していた者たちではない集団に追われるようになった。
それが、ハウザーと黒装束の団体だ。
ハウザー率いる黒装束の団体は、度々ロザリオと接触し、ロザリオと行動を共にしている者たちを次々に殺していった。ロザリオの命だけは奪わずに…。
ロザリオはその度に果てしない絶望を味わい、ただただ悲しみ、自分の弱さに嘆くのであった。
何度仲間が殺されたかわからない、そんなハウザーが襲ってきたある時、ロザリオはハウザーに聞く。
ロザリオー「なぜお前は仲間を殺し、俺を殺さないんだ!もう仲間を殺すのをやめてくれ…。」
ロザリオの問いにハウザーが答える。
ハウザーー「まだ、あなたを殺す時ではないんですよぉ。問いの答えとしては、”来たるべき時”にあなたを殺しやすくするため…ですかねぇ。あなたが仲間を失い、絶望している姿を見たいから、と言うのも理由の一つなんですがねぇ。」
ハウザーの発言に腹を立てロザリオが言う。
ロザリオー「そんな理由で仲間たちを…ふざけるなっ!!」
しかし、ハウザーに対抗できないロザリオはハウザーに涙ぐみながら言う。
ロザリオー「…もうやめてくれ。俺の命が欲しければ今すぐにやればいい。…だから、仲間だけは…やめてくれ…。」
ロザリオは必死の訴えた。がハウザーは言う。
ハウザーー「そう言われましても”あの方”の指示を確実に遂行するためにはロザリオ様のお仲間は邪魔なのです。指示があるまではあなたの命を奪うこともできませんし…。暇ですしねぇ。」
ハウザーが続ける。
ハウザーー「お仲間を殺されたくなければ、お仲間を作らないことです。そして、来たるべき時に私に殺されてください。それでは。」
ハウザーはそう言うとロザリオの前から姿を消した。
ロザリオが心の中で言う。
ロザリオー「(…ちくしょう。なんで、なんで…。もう仲間を失うのは嫌だ…。たくさんだ…。俺が求めていたものはこんなに残酷な者だったのか?なんで俺なんだ…。)」
ロザリオは混乱していた。しかし、ハウザーの言った”あの方”と言う言葉が気になった。
そこからロザリオはハウザーの言ったあの方の情報を得るために一人で旅を続ける。
また、ハウザーやその時の強敵に立ち向かうために、こっそりと武術の鍛錬や魔法の習得に励んだ。カモフラージュとして音楽家を名乗り、なるべく居場所がバレないように過ごしていた。
ロザリオは常に一人で行動していたため、その日からハウザーと接触することは一度もなかった。
そして、テラスティア王国を出て7年が過ぎた頃、デフェロン王国へと向かっていたロザリオはイルたちと出会った。
ハウザーとの接触は数年間なかったため、デフェロン王国までの間くらいはと気の緩みから行動を共にし、今に至る。ー
今までの経緯を話したロザリオが続ける。
ロザリオー「数年間やつとの接触がなかったから、根拠もなく”大丈夫だ”思ってしまっていたんだ。君たちでなかったらみんな殺されていたよ。危険な目に合わせてごめん。」
ロザリオの話にイルが冷静に言う。
イルー「…なるほど、そう言うことだったのか。」
ビル・レーラ・ライデンは声を揃えて言う。
ビル・レーラ・ライデンー「いや、ちょっと待って!ロザリオが…27歳!?しかも王子!?」
ライデンー「その見た目で俺より年下…。(がっかり)」
全員の言葉にロザリオが答える。
ロザリオー「…ってそこぉ!?…一応こう見えて27歳で”元”王子なんだよねぇ〜。そう言われると傷ついちゃうんだけどなぁ〜。」
その後、真剣な顔をしてロザリオが言う。
ロザリオー「そう言うことだから、明日にはみんなから離れるよ。短かったけど楽しかったよ、ありがとう…。」
ロザリオの言葉にイルが言う。
イルー「…いいや、その必要はないよ。俺たちは負けない。そうだよね、みんな。」
すかさずビルが言う。
ビルー「おうよ!イルの言う通りだぜ!そんな話を聞かされちゃー何が何でも殺されるわけにゃーいかねーしな。」
ライデンとレーラも同意するように頷く。
ロザリオは言う。
ロザリオー「…で、でも、見ただろう?相手は戦闘のプロだ!…俺がみんなから離れれるだけで危険はなくなる。それなら俺がすぐにでもみんなから離れるべきだ。…これ以上命が奪われるのは見たくないんだ…。」
ロザリオは心の奥底からみんなに訴えかける。ロザリオの様子にイルが答える。
イルー「だから問題ないって。ここにいるみんなはそんなにやわじゃないよ。それに、一人で旅をするなんて寂しいじゃないか。俺たちと一緒に行こう!」
そう言うとイルはロザリオに手を差し伸べた。少々の沈黙の後、ロザリオは涙ぐみながら言う。
ロザリオー「…みんな、ありがとう。…本当にありがとう。」
ロザリオの様子を見て、イルが言う。
イルー「それじゃあ、早速ハウザーたちにどう勝つか夕食を食べながら話し合おう!」
その夜はロザリオのもっているハウザーや黒装束の情報を全員に共有し、どう戦いを進めていくのか話し合い就寝した。
ハウザーに打ち勝つため、一人で足掻き続けたロザリオもとうとうハウザーにも負けない信じられる仲間ができた。
仲間たちの無念を晴らすためにも、ロザリオは今まで以上に燃えているのであった。

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